ひん曲がらないうちに

障がい者の芸術表現に関心のある方、その現場にいる方に注目していただきたい
書評『アール・ブリュット 野生芸術の真髄』(人文書院)があります。
特に文中の「ところが」と「だが」で否定する段落をみてください。
これは、わが国の障がいのあるアーティストの創造行為が
「和製アール・ブリュット化=政策芸術化」されることを憂う主張です。
「<ところが>、私たちが目にするアール・ブリュットは、知的障害を持った人たちが、
滞在する施設の利用時間を使って作ることを指導された絵や工作に限定されすぎていないか」。
そして「<だが>、日本でのアール・ブリュットをめぐる近年の奇妙な足並みの揃え方を見ていると、
デュビュッフェの思いとはまったく逆の方向に進んでいないだろうか」。
締めは「間近に迫ったオリンピック・パラリンピックをめぐる国や自治体による<政策芸術化>が
進行しているのを忘れてはいけない」(朝日新聞2017.07.09)と最大限の憂いが述べられています。
彼が否定する主張を平たくいうとアール・ブリュットの原義/定義をひん曲げてしまった
福祉事業者と美術研究者への異議申し立てです。
そこでわれわれ(障がい者の芸術表現に関心のある方、現場にいる方)が考えなければならないのは、
なぜ、福祉事業者は意図的に原義をひん曲げてしまったのか?
そして、ひん曲げることに美術研究者は、なぜ、無意識だったのか?<政策芸術化>が進行しないうちに、
考えてみたいと思います。ぜひ、みなさんも、議論してみてください。





ps人文書院に問い合わせました。以下の『アール・ブリュット』刊行記念イベントが開催されるようです。
9月2日は京都。9月9日は東京だそうです。ご興味があればぜひぜひ。
http://www.jimbunshoin.co.jp/news/n19299.html
今月末には人文書院WEBにて告知されるそうです。
9/2ギャルリー宮脇
http://www.galerie-miyawaki.com/miya.htm
杉村昌昭さん(訳者)と鈴木創士(フランス文学者)の対談
9/9銀座 永井画廊
http://www.nagai-garou.com/
杉村昌昭さん(訳者)のみのトーク予定
http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b272221.html

9/9東京のシンポで登壇します

「障害者芸術支援フォーラム」の骨格が出来上がる前のことです。
村木厚子さん(元厚労省事務次官/フォーラムでビデオレターを
くださいます)から手渡された朝日新聞「折々のことば」を見ながら、
こんな話をしました。「ある思想や運動に『ひとつの壁をつくることで、
ひとりの囚人じゃなくて、ふたりの囚人が誕生する』(デイヴィッド・ドゥカヴニー)。
そんな自体は避けなければならない……障がいのあるアーティスト主体で考えれば団体間で
壁をつくるのは本末転倒だよね」。
「折々のことば」の著者・鷲田清一さんは、記事本文でこのように続けます。
「壁をつくり誰かを閉めだすというのは、壁の中に自分を閉じ込め出られなくすること。
牛が聖なる動物として扱われるインドをめざして農場を抜け出た雌牛は、
行く先々でこうした仕切りに出くわし、『わたしたち、なんだか、
ただ壁から壁へと移動してるだけなんじゃないかしら』とため息をつく。
家畜たちを主人公にした現代の寓話(ぐうわ)「ホーリー・カウ」(菊池由美訳)から」2016.5.28。
他者を締め出すため/排除するために壁をつくれば、
自らも壁に囲われ閉じ込められる……障がい者の芸術活動を壁で囲わないために、
障がいのあるアーティスト、ご家族、そしてその伴走者であるアート系施設のスタッフさん。
自らの立ち位置を確認するために、このフォーラムを使ってください。
くわえて障害者文化芸術推進法(案)を進める超党派の政治家さん、厚労省・文化庁のお役人、
美術と福祉の研究者。2020年にむけて議論することは、まだまだあるはずです。
https://www.diversity-in-the-arts.jp/news/2642
申込み:https://goo.gl/forms/m3rVPOaPSnYkShvY2
※応募締切 8月25日(金)

森のキッチン

常勤&非常勤スタッフ2000名を抱える巨大社会福祉法人・コスモス。
その大きな組織が運営する、小ぶりで小粋なレストランで
昼ごはんをいただきました。
レストランの受付から厨房まで障がいのあるスタッフと
健常のスタッフが担ってはります。
「障がい者が出来ること」で満足し・あぐらをかいている
障がい者就労施設が多い中、「味」をキープし、
「空間」を見せる「森のキッチン」は別格です。
インカーブのような弱小法人ではなく巨大法人ゆえの悩みを抱えつつ、
「金太郎飴障がい者就労」への異議申し立てがわかりやすく表現し、
実践されていました。
施設の中で完結する社会ではなく、あたりまえの社会と接点を増やしていく。
接点を増やせばやがて線になります。
そして、面。
しかし、増やせばいいというものではありません。
見せ方、発信の仕方、つまり表現する「舞台」のデザインが
イケてない場合が多いように思います。
なぜ、イケてないもので満足するのか?
それは障がいのある方と同伴するスタッフや運営者が、
それに満足するからです。
キモはスタッフのチカラと運営者の感性です。
ぜひ、関西にお越しの際は堺市庁舎にある「森のキッチン」へ!!
学びの多いレストランです。
増田さん、素敵なレストランでした、ありがとう、また会いにいきます。
若宮さん、同伴ありがとう。
https://www.facebook.com/sakaicosmos.morinokitchen/
http://soar-world.com/2016/11/17/morinokitchen/

アトリエインカーブで[おなじ釜の飯]プロジェクトと題した、
有給のインターンシップ制度がスタートしました!!
インカーブは、15年にわたって知的に障がいのあるアーティストたちの創作活動の環境を整え、
彼らが作家として独立することを支援してきました。
国内の美術館やギャラリーでは、展覧会が企画され、国内外のアートフェアにも出展しています。
15年もやっていると、全国から「アート支援の困りごと」が寄せられます。
わたしなりに困りごとを分析すると、とどのつまり「障がいのあるアーティストを支援するスタッフに
『アートやデザインの専門職』が少ないこと」にたどり着きます。

一方、障がいのあるお子様のご家族やマスコミから、同じような質問を幾度となく受けてきました。
「なぜ、インカーブ・ツー(二つ目のインカーブ)をつくらないのですか?」
「土地と建物は何とかしますから、うちの子のためにインカーブ・ツーを作ってください!」。
うれしいお言葉です、そんなにインカーブを好いてくれはって。
でも「片手にアートとデザイン、もう一方の手に福祉の心をもつスタッフは、
そう簡単に見つかるわけじゃないんです」「わたしの体力が落ちている今、
インカーブ・ツーを作るために、新たに10人近いスタッフを育てるのは難しいんです」と
お断りしてきました。

でも、その無理だ!の観点を少しズラしてみました。ズラし方はこうです。
「インカーブがスタッフを揃えるのではなく、
アート・デザインと福祉を学ぶ/仕事にするあなたのお手伝いをさせて頂く」
「一度に10人は無理でも1人ずつぐらいなら可能かも」。

ということで、「アート支援の困りごと」に応えるための「人づくり」をすることにしました。
それがインカーブの[おなじ釜の飯]プロジェクトです。このプロジェクトでは、
私たちスタッフやアーティストとおなじ釜の飯を食べながら、インカーブ独自の障がいのある方の
創作活動の支援や、作品展示発表・作品販売などのノウハウをお伝えします。
おなじ釜の飯を食べますが「ずっとインカーブで食べる/仕事をする」ことを意図していません。
あなたの働く場所に帰って、インカーブ的アート支援方法を導入する、
もしくは反面教師として活用していただくことをイメージしています。
嬉しいことに2017年度(来年の3月まで)は、ご希望者でいっぱいです。
そこで、2018年度(来年の4月以降)の募集を行いたいと思います。
インカーブとおなじ釜の飯を食べてもいいよっていうみなさんのご応募をお待ちしております。
詳細は下記のHPまで。
http://incurve.jp/kamameshi.html

ディレクターを選ぶ

「2つを1つにできる、そんなディレクターを選ぶ」ことがポイントです。
今日は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織員会に設置された
「文化・教育委員会」の5回目の会議です。
いつものように朝5時半の出発です(もう、慣れっこ)。
オリパラのスポーツと文化・教育は車の両輪です。
委員会では、こんなことを議論しています。
その一つが「東京2020参加プログラム」の活性化。
すでに217の団体が主体登録を済ませ、6,079のアクションが認証され、
教育プログラムを実施している学校は3,731校。
認証件数の全体で約10,000件!!だそうです。
だかしかし、盛り上がりは関東のみ。
なかなか地方には波及しませんね。関西はシーンとしたまま。
「シーンとした状況から何とか盛り上げたい、その為に出来ることは、何?」
というのが議題です。
https://tokyo2020.jp/jp/get-involved/certification/about/

そして、もう一つの議題がオリパラ直前からスタートする
「(仮称)フェスティバル」について。
いまはフレームを作っている段階でディテールの詰めはまだまだ先です。
ただ、ロンドンやリオをみても、オリパラ成功の鍵を握っているのが、
このフェスティバルです。
そこでポイントとなるのが<オリ>と<パラ>を架橋できるディレクターの選任です。
すでに何人かお名前はあがっているようですが、
わたしは「健常者と障がい者が興す文化に興味をもって、
<既に>取り組んでいる人」に就任していただきと組織委員会にお伝えしました。
個人名をあげて推薦しましたが、個人的なお付き合いがある方ではありません。
でも、この方なら<オリ>と<パラ>を架橋できる可能性がある、と感じています。
大切なのは、両方の文化支援に<既に>取り組んでいることです。
だしぬけ・突然・すぐさまに手をあげるニワカディレクターでは務まりません。
ネームバリューだけでは、この大仕事をハンドリングできるとは思いません。
お飾りではなく、実践型ディレクターの選任を主張したいと思っています。

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