インカーブアーティスト寺尾勝広の「PARALLELS(パラレルズ)」展と
MoMA「20世紀美術におけるプリミティヴィズム-『部族的』なるものと『モダン』なるものとの親縁性」展。

二つの展覧会を絡めて、こんなこと思いました。

サンフランシスコのジャック・フィッシャー・ギャラリーで、
インカーブのアーティスト・寺尾勝広とCharles Fahlenによる
二人展「PARALLELS」がスタートしました。
ギャラリー・オーナーのジャック・フィッシャーの企画意図は
「時間的にも地理的にも全く異なる環境にいる二人のアーティストが並んだ時、
形式や潜在的な興味に類似点”PARALLELS(パラレルズ)”を感じてっていただきたい」ということです。
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僕がPARALLELS(パラレルズ)というテーマで思い出すのは、
1984年9月27日から1985〜1月15日まで、ニューヨークの近代美術館MoMA)で開かれた
「20世紀美術におけるプリミティヴィズムー『部族的』なるものと『モダン』なるものとの親縁性」展
の企画意図と展示方法です。

吉田憲司さんが書かれた名著『文化の「発見」-驚異の部屋からヴァーチャル・ミュージアムまで-』
(1999年5月25日岩波書店)には、MoMAで開かれた上記の展覧会意図をこのように考察されていました。

「20世紀美術におけるプリミティヴィズムー『部族的』なるものと『モダン』なるものとの親縁性」展
の最大の問題点は、「モダン」なるものと「区別」される、「部族的」なるものが存在するという、
まさにその前提であったといわなければならない。

また美術評論家のマクェヴィリーの言葉を援用しながら。
「非西洋のそれぞれの社会において個々の作品がどのような目的でつくられ、
作者のどのような意図を反映しているのかはいっさい吟味されないままに、
形式上の類似性が、制作の動機が共通であるという主張に短絡的に結びついているというのである。
しかも、「親縁性」という言葉を拠り所としたこうした「モダン・アート」の作品は
「プリミティヴ・アート」の作品の組み合わせはきてめて恣意的なものであり、
この展覧会で展示するということを除けばなんら一対にされる理由のないものだという
(中略)西洋の作品にはその制作年代を表記する一方で、「プリミティヴ」な作品についての
年代をいっさいあげていない」

つまり吉田さんの主張は
「20世紀美術におけるプリミティヴィズムー『部族的』なるものと『モダン』なるものとの親縁性」展は
西洋と非西洋を区別し、西洋から一方的にみた非西洋の紹介だったことを明らかにされています。
また、それは西洋の上意を非西洋に下達する残酷な通達だったように思います。

他方、今回の「PARALLELS」では「西洋の上意を非西洋に下達する残酷な通達」はありませんでした。
事前にジャック・フィッシャー・ギャラリーのキュレーターがアトリエインカーブに訪問され、
寺尾勝広と会い、お気に入りの作品を購入し、インカーブの活動を真摯に聞き、
そして最終調整は連日のメール確認。丁寧なハンドリングが実って「PARALLELS」がスタートしました。

当然といえば当然のことですが「時間的にも地理的にも全く異なる環境にいる二人のアーティストが並んだ時、
形式や潜在的な興味に類似点”PARALLELS(パラレルズ)”」を見いだしたのはキュレーターです。
さて、今回の展覧会はキュレーターの意図通り二人のアーティストは「区別のない」同じ土俵で
展覧できたのか、それとも「西洋の上意を非西洋に下達する残酷な通達」としてお客さまに映ったのか?
展覧会が終わったら聞いてみたいと思います。
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PARALLELS
CHARLES FAHLEN & KATSUHIRO TERAO
2014年3月22日~4月26日
ジャック・フィッシャー・ギャラリー
http://www.jackfischergallery.com/
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