人生で一度だけ「この人にお仕えしたい」と思えるデザイナーがいました。
そのかたはインテリアデザイナーの野井成正さんです。
野井さんの作品に出会ったのはデザインを学んでいた学生の頃。
約30年前のことです。
形や色を競う消費されるデザインではなく、
どことなく儚げで、繊細でした。
野井さんに恋文FAXを送りつけていました。さぞかし、ご迷惑だったと思います。
恋文の内容は「昨日、BAR川名(野井さんがデザインされた伝説のバー)にいってきました。
30ミリの木材で構成されたカウンターバック。漏れるホリゾント照明。
カンターと天井高さのバランス。JAZZとお酒……すべてが憧れのデザインです」
恋文作戦が実り、晩ご飯にお誘いいただけるようになりました。
20歳違いの僕にも優しく丁寧に「デザインとは」を教えてくださいました。
乃村工藝を卒業して、11年。
先日、久しぶりにお会いする事ができました。
相変わらず、気さくで、優しい野井さんでした。
「この人にお仕えしたい」と思えるデザイナーが野井さんでよかったと思います。