村木厚子さんが立ち上げた一般社団法人「I&Others」の活動が、
日経新聞をはじめ様々なメディアで取り上げられています。
I&Othersは、企業と福祉をつなぐ新たな試みです、というと実務的な連携の話に見えますが、
本質はもう少し深いところにあります。
それは、社会の中に点在している善意や資源や関心を、困りごとを抱えた人や現場へと、
偶然ではなく仕組みとして届ける試みなのです。
福祉の現場には、公的制度だけでは拾いきれない困難がいくつもあります。
一方で社会の側には、「何かしたい」「力になりたい」という思いが確かにある。
にもかかわらず、その両者はしばしば出会えないままに終わります。
I&Othersが目指しているのは、その断絶を埋めることです。
「困っています」という声と、「私にできることでよければ」という意志とをつなぐこと。
言い換えれば、支援を特別な行為として囲い込むのではなく、
支え合いを社会の構造の中に組み込み直そうとする営み。
ここにあるのは、単なるマッチングの発想ではありません。
支援する側と支援される側を固定せず、人は誰もが、ある時には支える側であり、
ある時には支えられる側でもある、という人間理解と円環です。
その背景には「みんな弱くていいのだ」への頷きがあるように思います。
福祉を福祉の内部に閉じ込めず、企業、市民社会、専門機関、当事者の声を含めて、
社会全体で引き受けていく。その思想に、私は大きな可能性を感じています。

I&Othersのシンボルマークに、インカーブの作品が採用されました。
経緯をうかがうと、I&Othersのスタッフの方がアートフェア東京で
インカーブのアーティストによる「りんごちゃん」の作品と出会い、
それを購入してくださったことがはじまりでした。
そしてその作品が、ルターの
「たとえ明日世界が滅びるとわかっていても、私は今日りんごの木を植える」という
言葉と重なり、I&Othersのシンボルマークとして歩みを共にすることになりました。
私はこの流れに、どこか象徴的なものを感じます。社会が不安定で、
分断や閉塞が語られやすい時代に、それでもなお「今日、りんごの木を植える」という態度。
すぐに結果が出るとは限らなくても、人を信じ、社会をあきらめず、
未来に向けて小さな手を打つこと。I&Othersの構想もまた、
そのような実践なのではないでしょうか。
福祉もアートも、即効性だけで測ることのできない営みです。
だけれど、見えにくい痛みを可視化し、言葉になりにくい願いにかたちを与え、
社会の想像力を少しずつ広げていくという点で、
両者は深いところでつながっているように思います。
「りんごちゃん」がI&Othersの象徴となったことには、
単なるデザイン採用以上の意味があるのかもしれません。

企業と福祉をつなぐ。
その先にあるのは、社会の中に「おおきな応援団」をつくること。
その歩みが、これからどのように育っていくのか、ぜひ、みなさんも注目してください。
https://iandothers.org/
https://news.yahoo.co.jp/articles/7b7901c4ee2317257fbf691608f935d3fed3ee3a