
アトリエ インカーブ設立15周年記念シンポジウム
ATELIER INCURVE in ART FAIRS
障がいのあるひとの創作と市場
2017. 9. 24 [Sun] 13:30 – 17:00
障がいのあるひとの創作活動やアート作品に注目が集まるなか、その作品を市場につなげる試みが模索されています。
15年にわたって知的に障がいのあるアーティストたちの創作活動を支援してきたアトリエ インカーブは、現代アートとして作品を発表・販売し、彼ら/彼女らが作家として独立することを目指してきました。私たちは積極的に市場参加を進めるなかで、時に迷い、落胆し、それでも大きな希望を手に入れました。NHK・Eテレ「オイコノミア」で解説を務める東京大学大学院経済学研究科の松井彰彦教授は、市場は〈弱肉強食〉や〈競争〉のイメージがある一方で〈自立〉を助ける場でもあると語ります。本シンポジウムでは、松井教授に「市場の力」についてご講演いただき、アトリエ インカーブ代表の今中博之と「市場×福祉」をテーマに対談します。この春に参加したニューヨークと東京のアートフェアの報告書『ATELIER INCURVE in ART FAIRS』(*)の発表を通して、「障がいのあるひとの創作と市場」の可能性を探り、活動の場を広げることを目指します。
*平成28年度 文化庁 戦略的芸術文化創造推進事業 「障がいのある人による芸術作品の海外展示・市場動向調査事業」報告書
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art on paper
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アートフェア東京
終了報告
アトリエ インカーブ設立15周年記念シンポジウム『 ATELIER INCURVE in ART FAIRS − 障がいのあるひとの創作と市場 − 』が、無事に終了いたしました。初の試みとなるクラウドファンディングには、88名の方がご支援をお寄せくださいました。みなさまのお名前(掲載をご承諾いただいた方)は、〈こちら〉でご紹介しております。
「アート×市場×福祉」をテーマにした今回のシンポジウムには、全国各地から定員の200名を大きく上回る参加申込みをいただき、福祉・アート・教育など様々な分野の方がご参加くださいました。NHK・Eテレ「オイコノミア」で解説を務める東京大学大学院経済学研究科の松井彰彦教授による基調講演では、市場の力についてお話しいただき、インカーブ代表の今中博之からは、インカーブの考えや取り組みについて、スタッフの林智樹・三宅優子からは、インカーブが出展した国内外のアートフェアの報告や、作品を市場につなげるための準備についてお話ししました。松井教授と今中理事長の対談では、「福祉」の視点で語られることの多かった「障がいのあるひとの創作」について「市場」を切り口に熱い議論がなされました。
シンポジウムにご参加くださった方からたくさんの感想やご意見をいただきました。それぞれのお立場や視点から、考えを深めたり、新たな気付きを得る機会としてくださったようで、とてもありがたく思っています。私たちにとっても、15周年という節目をこのような形でみなさまと共有できたことは、未来につながる大きな財産となりました。
今回のシンポジウムをまとめた書籍を来年の春以降に刊行予定です。詳細は、インカーブのwebサイトやFacebookページで随時ご紹介していく予定ですので、ご笑覧いただけましたら幸いです。ご参加が叶わなかった方や興味をお持ちくださった方に、お手にとっていただければうれしく思います。
たくさんの方にご支援やご関心をお寄せいただき、スタッフ一同、感謝の気持ちでいっぱいです。それと同時に身の引き締まる思いがいたします。これからも、アーティストそれぞれの想いに寄り添い、みんなが心穏やかに過ごせるよう日々を大切にしていきたいと思います。今後ともあたたかくお見守りいただけましたら幸いです。
ありがとうございました。
社会福祉法人 素王会
アトリエ インカーブ

シンポジウム会場で皆さまからお寄せいただいたご質問に、アトリエ インカーブ代表の今中博之がお答えします。 類似の質問にはまとめての掲載とさせていただきますこと、ご了承くださいませ。 また、今回お答えしきれなかったご質問は、来年に発行する書籍で取り扱わせていただく予定をしております。
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アートフェアやアトリエの芸術ビジネスが成立する条件は何でしょうか? |
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芸術ビジネスを成立させるためには、作品の評価をはっきりつけなければならないと思います。そのために、作品を評価する立場にある学芸員の関心と能力を高める必要があると考えます。平成30年度の文化庁概算要求の中でも、アート市場が活性化するには、美術館において作品の適正な評価・価値付けが必要だと指摘されています。 |
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市場のルールは、現実的には弱者を抑圧し、貧困を生み出しているのではないでしょうか? |
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本シンポジウムで取り扱った「市場のルール」は、市場規範のことを指しています。絵本「手ぶくろを買いに」の子狐は帽子屋の主人に銀貨を渡し、てぶくろを買いました。松井教授曰く、子狐であれ、健常者であれ、障がい者であれ、「お金はお金」ということが市場の一定のルールであり、市場規範だということでした。 ですので、「お金はお金」という市場規範が「弱者を抑圧し、貧困を生み出している」ということにはつながらないと考えています。 |
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今中さんが「次の世代では、アート以外の逃げ道がある方が良い」とおっしゃっていましたが、なぜ必要なのでしょうか? |
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「アート」に特化したアトリエ インカーブは、ある意味とても排他的です。利用者を受け入れる際も「アートが好きだ」という方しか入れませんし、スタッフもアートとデザインに理解のある方しか参加できない。もしアート以外の道があれば、利用できる方もスタッフのなり手も増えるのではないか、などと考えています。裏腹に、特化した事業にはなりにくいかもしれませんが。 インカーブが今後そのように方向転換をすることは無いと思いますが、これから新しく事業を始める方は、アート以外の逃げ道=選択肢があるといいかもしれません。 |
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クラウドファンディングで資金を募る際、アイディアやアーティストの面白さ、リターンの良さ等をもっと押し出すべきだったのではないでしょうか?いきなり障害を持って寄付を募ろうとしているように見え、アートフェア等で障がいを表に出さずに展開していることと矛盾があると感じました。 |
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初の試みとなったクラウドファンディングでは、シンポジウムの開催費用を募っていました。本シンポジウムのテーマは「障がいのあるひとの創作と市場」であり、アトリエ インカーブの事業だけでなくシンポジウムの内容についても丁寧にご説明したい、という想いがありました。そのため、「障がい」について触れる部分が多くなってしまったと感じています。とはいえ、これまでインカーブを見守ってきてくださった皆さまには違和感の残る打ち出し方だったかもしれません。ご指摘いただいたように、今後はインカーブの取り組みと矛盾がないよう、慎重に言葉を選んで参ります。 |
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絵を描かない(希望しない・描けなくなった)人はどうしているのでしょうか? |
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絵を描いていない方に対しては、ご本人が絵を描きたくなるまで待っています。 契約する際の基準は、描くこと・作ることが好きだということです。決して作品の精度・クオリティに注目しているわけではありません。 |
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アトリエ インカーブは、「アート」と「福祉」のバランスをどのように保たれているのでしょうか?私が務める福祉施設では生活支援にかける時間が多く、創作活動に力を注げない歯がゆさを感じています。 |
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アトリエ インカーブでは、「生活支援」と「アート・創作活動の支援」を分けて考えてはいません。互いに重なっている部分がとても多いのです。例えば、画材の準備や制作環境の整備がそのまま生活支援にもなっています。生活自体がアート・創作活動なのです。 |
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学校教育の中で、アートを通じたオリンピック・パラリンピック教育はどのような考え方・やり方が望ましいとお考えでしょうか? |
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「オリンピック」と「パラリンピック」の融合が必要だと考えています。「アート」は健常者も障がい者も関係なく同じラインに立てる、平等に参加できます。「アート」にはそれだけの可能性があると知ってもらうことが重要です。走りっこしたら障がいのある人は負けるかもしれませんが、キャンバス1枚と鉛筆1本あれば、同じラインに立てるのです。学校教育のなかで「物理」や「数学」で「アート」のような共通の基盤が作れるかというと、非常に作りにくいのではないでしょうか。
具体的な例として、2016・2017年にアトリエ インカーブのアーティストが小学校に出向いて行った授業があります。アーティストと生徒の皆さんが同じ画材・時間・モチーフで絵を描き「アートの可能性」を感じてもらう機会となりました。 |
開催概要
日時
2017年9月24日(日) 13:30 − 17:00 / 開場13:00
会場
大阪国際がんセンター 1階 大講堂
大阪市中央区大手前3-1-69
*詳しくは交通アクセスをご参照ください
*「お祝いのお花を贈りたい」というありがたいお言葉をいただいておりますが、病院内という会場の性質から、生花をお受けとりすることができません。
恐れ入りますが、お持ち込み・お届けはご遠慮いただけますようお願いいたします。
定員
200名(要申込み・先着順)
締切
定員に達したため受付は終了いたしました。
たくさんのお申し込みをいただき誠にありがとうございました。
資料代
500円(高校生以下無料)
*資料内容 ①作品の保管・販売のポイント②国内外のアートフェアの情報
書籍・グッズの販売
会場でアトリエ インカーブが制作した書籍とグッズの販売を行います。
主催・後援
主催:社会福祉法人 素王会 アトリエ インカーブ
後援:大阪府・毎日新聞社
お申込み
定員に達したため受付は終了いたしました。
たくさんのお申し込みをいただき誠にありがとうございました。
本シンポジウムの書籍化が決定しました!(2018年春に刊行予定)
プログラムと登壇者
プログラム
13:30 − 13:35 開会挨拶
13:35 − 14:10 講演「アトリエ インカーブの立点」今中博之
14:10 − 15:10 基調講演「市場の力」松井彰彦
15:25 − 16:10 報告「国内外のアートフェア」林智樹・三宅優子
16:10 − 16:55 対談 「市場×福祉」 松井彰彦・今中博之
16:55 − 17:00 閉会挨拶
登壇者
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松井彰彦 Akihiko Matsui 経済学者/東京大学大学院経済学研究科教授。専門はゲーム理論とそれを応用した社会的障害の分析。2002年日経・経済図書文化賞(著書『慣習と規範の経済学』に対して)、2006年日本学術振興会賞及び日本学士院学術奨励賞、2007年日本経済学会中原賞を受賞。主な著作に『慣習と規範の経済学 ― ゲーム理論からのメッセージ』(東洋経済新報社)、『市場の中の女の子―市場の経済学・文化の経済学』(PHP研究所)、『不自由な経済』(日本経済新聞出版社)などがある。共著に『障害を問い直す』(東洋経済新報社)などがある。 |
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今中博之 Hiroshi Imanaka 社会福祉法人 素王会 理事長/アトリエ インカーブ クリエイティブディレクター。知的に障がいのあるアーティストの作品を国内外の美術館やアートフェアに発信している。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 文化・教育委員会 委員、エンブレム委員会 委員。厚生労働省・文化庁2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向けた障害者の芸術振興に関する懇談会委員。大阪府・アートを活かした障がい者の就労支援事業企画部会副部会長。グッドデザイン賞など受賞。主な著作に『観点変更』(創元社) などがある。一級建築士。 |
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林智樹 Tomoki Hayashi アトリエ インカーブ チーフ。ギャラリー インカーブ|京都(インカーブ専属のコマーシャルギャラリー)の立ち上げに携わり、作品の管理や国内外のアートフェア業務を担当。社会福祉士、学芸員の資格を有する。 |
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三宅優子 Yuko Miyake アトリエ インカーブ チーフ。国内外のアートフェア出展申請・展示プラン作成・現場対応などの業務に携わる。グラフィックデザインを担当。社会福祉士、学芸員の資格を有する。 |
クラウドファンディング
ご支援ありがとうございました!
今回のシンポジウム開催にあたり、クラウドファンディング・サイト「Readyfor」を通じて、
下記のみなさまをはじめ88名の方よりご支援をいただきました。
おかげさまで無事にシンポジウムを開催できましたことを、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
(掲載をご承諾いただいた方のお名前は下記の通りです。敬称略・順不同)
盛和春 |
林篤彦 |
有限会社八木デザイン |
つなぐ実行委員 久世洋美 |
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多田卓也 |
小原緑 |
瀧口亮一 |
YUKIKO KOIDE PRESENTS |
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谷町の小さな雑貨屋above |
みふくデザイン |
城下浩伺 |
西谷工務店 |
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内野美代 |
株式会社 第三文明社 |
北村仁・祐未 |
鯵坂兼充 |
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青山俊子 |
和田大象 |
木下あき |
株式会社ツバキ薬粧 |
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橋口圭子 |
四つ葉の家 |
與口修 |
舎林 山田冨美子 |
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藤村千香子 |
桜井かおる |
赤穂まち子 |
長船美子 |
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多田美恵 |
山下耕一 |
則政佐明 |
西牧正人 |
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森下享洋 |
代谷章彦 |
北角耕三 |
德宮峻 |
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高橋雅子 |
森脇祥子 |
佐多直厚 |
原章 |
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miecom |
三宅三千代 |
石原次郎 |
谷真理子 |
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Su- |
かなかなファクトリー |
川井田祥子 |
長津結一郎 |
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ondo / G_GRAPHICS |
松尾 丁 |
輪島満貴子 |
八木信幸 |
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脇阪明日香 |
山下博己 |
阪本裕子 |
澤田真樹 |
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増田靖 |
清野智子 |
小林徹也 |
金沢星稜大学 人間科学部 池上奨 |
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森田和之 |
川合靖之 |
オフィス しみづ はまもとみゆき |
あーとすたじお源 福家健彦 |
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津久間麻美 |
アトリエコーナス 白岩高子 |
一般社団法人暮らしランプ |
菊池歩 |
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このほか、たくさんの方からご支援いただきました。
心よりお礼申し上げます。

交通アクセス
大阪市中央区大手前3-1-69 大阪国際がんセンター 1階 大講堂
◎電車:地下鉄「谷町四丁目駅」の 北改札口より、バリアフリー 地下連絡通路にて徒歩5分
◎お車:東大阪線「法円坂出口」より約5分、東大阪線「森之宮出口」より約8分/有料の駐車場があります(障がい者手帳提示で無料)
*台数に限りがありますので、可能な場合は公共交通機関のご利用をおすすめします。
地下鉄からのアクセス
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関連企画展
SHINKI, SAKAMOTO, TERAO, TERAI tour: ATELIER INCURVE in ART FAIRS
ギャラリー インカーブ|京都 にて、ニューヨーク・東京のアートフェアに出品した4人の作品を展示します。
会期
9月29日(金)・30日(土)・10月6日(金)・7日(土) / 12:00 − 19:00
会場
ギャラリー インカーブ|京都
京都市中京区壬生高樋町60-18

お問合せ
社会福祉法人 素王会 アトリエ インカーブ
受付時間: 火曜日~金曜日(月曜不定休 / 日曜日・祝日休み) 10:00〜17:00
info@incurve.jp
06-6707-0165
担当:森田