五輪エンブレム委員会で王さんと交わしたゾクッとするおはなし、第二話です。
野球好きな方にはゾクッとするお話しでも、
そうではない方にとってはチンプンカンプンですよね、すみません。
「クリーンナップ(3・4・5番打者に対して使われる用語)とはどんな能力をもった選手ですか?」
との問いに、王さんは「破壊的な打撃」ができる選手だとお答えくださいました。
過去に「センターラインから左は野手がひとり」そんな守備体系がありました。
1964年5月3日の阪神戦で4打席連続ホーマーを放った2日後の広島戦。
王さんの打撃を撹乱するためにために開発されたのが「センターラインから左は野手がひとり」
の「王シフト」です。そこに野手がいると分かっていても、あえて、そこに打ち込む。
野手の間が狭いと分かっていても、あえて、その間を抜く。
温厚で優しい王さんの語りからは想像できない「破壊する」という強い言葉。
そのギャップにゾクゾクし通しでした。
そして、王さんは「最近は破壊的な打撃をする選手がいなくなった」とも。
「あえて、不利だと分かっていても、勝負を挑む」。
そんな選手、確かに少なくなりました。
チームの勝率にエクスタシーは感じませんが、個人対個人が作り上げる物語にゾクッとします。
いつの間にかわれわれの社会は、「他者を圧倒し粉砕する破壊的こと」を否定し、
その言葉に嫌悪感さえ覚えているのかもしれません。
ヴァルネラブルな人を前に、似つかわしくない言葉かもしれません。
でも……親鸞さんではないですが、たまたまご縁がないだけで、
ご縁があれば破壊的なことをしでかすのが、われわれです。
ご縁が巡ってくれば酷いヤツになってしまう、かもしれない。
そんな揺らぐ存在です。
王さんのバットマンとしての覚悟にゾクッとした数分間でした。
http://cgi2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009030149_00000
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