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『ソーシャルワーク研究』(相川書房、2018.44-3.175)に
「“福祉の文化化と文化の福祉化”の可能性」を寄稿しました。
Keywordは福祉文化、市場、アート、ソーシャルアクション、人材育成。
内容を一言で言うと「そもそも福祉のなかに文化は含まれてるもんだよ」ということです。
社会に文化をONするのではなく、そもそもINされているのだ、ということを述べました。
小見出しで雰囲気をみていただくと、まず「福祉とアートを架橋する」、
次いで「経済なき道徳は戯言であり、道徳なき経済は犯罪である」、
「アートマーケットという市場」……「悪気のない善意が生むカテゴライズ」、
「文化庁と厚生労働省が協働する人材育成」です。
先日、上梓した『社会を希望を満たす働き方』と(どんぴしゃ)同時に書いていたので、
似たり寄ったりのところもあるのですが、よりソーシャルワークに軸足を置いて書いてみました。
ところでどこかで見たような「タイトル」だと思いませんか?
そうこれは一番ヶ瀬康子さんが語っておられた「福祉の文化化と文化の福祉化」のコピペ。
一番ヶ瀬氏が当時の社会文化学会(現在は日本福祉文化学会)を創設するときに
「福祉の質を高め普遍的な拡がりをもたせるために他の分野において協同してきたひと、
例えば建築家、ジャーナリスト、映画監督、レクリエーションワーカー、
ビジネスマンその他のさまざまな人々」を巻き込もうとしたことのコピペです。
インカーブを通して「福祉の文化化と文化の福祉化」の可能性を考えてみました。
全文は以下のHPでご覧いただけます。
よかったらご笑覧んください。
・通常のアーカイブページ
http://incurve.jp/archives/za_181031sw.html
・特設の閲覧ページ
http://incurve.jp/archives/181031sw.html

明後日、神谷梢と森田静香が
金沢美術工芸大学で講義を行います。
テーマは「障がいのある人の創作活動
-ソーシャルデザインの観点から-」。
社会福祉と芸術、社会福祉とデザイン、
社会福祉と経済、社会福祉と宗教。
社会福祉と共感的にむすぎつく領域はふえつづけています。
もはやひとつの論点で整理できるものではなくなりましたね。
複雑にオーバーラップしている社会の中の福祉を
インカーブの実践を通して紐解いてみたいと思います。
金美のみなさん、お楽しみに!
(今回の講義は一般向けではありません。
金美の学生くんのみが対象です)

響く彼と響かせた新木

小学5年生の彼、ありがとね。
響きます。
「絵を書くことは、すばらしいことです。
リアルな絵もふしぎな絵も、
みんなアートの中の絵というすばらしいものの、一つです。
新木さんは、プロレスが好きで、プロレスの絵を書いたり、
ボクシングの絵を書いたりしていますが、
ぼくはマンガが好きです。(マンガもアートの1つですか?)
絵のことをおしてくれてありがとうございます」。
毎年おもうのだ。
私の子供の頃に新木画伯の授業をうけていたら人生かわったって。
響く彼も、響かせた新木もすごい。

こそっと開けよ

いま届いたAXISの20年。
もう20年。
すでに20年。
まだ20年。
これからの20年。
もういいんじゃないの20年。
あいかわらずの20年。
続けるって大変だよなの20年。
でも、AXIS好きだなの20年。
一人になったら、こそっと開けよ。

9月26日、厚生労働省・文化庁で初めての「障害者文化芸術活動推進有識者会議」が行われました。
先日、議事録がupされました。私が発言した箇所のみを引いておきます。
ご興味ある方はご笑覧ください。
議題は(1)障害者による文化芸術活動の推進に関する法律の概要について
(2)障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画の策定について
(3)関係機関における障害者の文化芸術活動の推進に向けた取組について、などです。
通読していただければ「障害者文化芸術活動推進法」に対する
それぞれの委員の立ち位置がわかると思います。
ただひとり3分から5分の発言時間。
委員どうしが前向きにディベートする時間なんてありません。
悔しいですが、これが今回の会議の構成、つまりデザインというわけですね。
以下は、今中の発言のみ。発言で採用した当日資料の「朝日新聞の記事」も添付しました。
あわせてお読みいただくと発言主旨がわかりやすいと思います。
なお、有識者会議の議事録全文をお読みいただける方は最下段のHPを。
ただし議題とは関係のない「話し」も多いのでそこは斜め読みしてくださいね。
会議ではよくある話です。

○今中構成員 アトリエインカーブの今中です。よろしくお願いいたします。
インカーブの特徴は、日本だけではなく海外のアートフェアを含めて
作品と市場の接点をつくっているところです。
発言時間も少ないのでインカーブの話はさておき、
今回の「障害者文化芸術活動推進法」に関して2~3、感じるところを述べたいと思います。
皆様のお手元の資料で、朝日新聞の資料Bのほうを見ていただけますか。
その下段のほうに、私の意見と、今日は欠席されていますが、保坂委員の意見が出ています。
要約すると、この法律ができることによって
健常者と障害者というのが「分断」されるのではないかという懸念を、
私も保坂委員も持っているということが書かれています。
アートに障害者という冠をかけたところに何か誤解が生まれる、
認識のずれが生まれるのではないかということを私も懸念をしております。
それが、まずこの法全体に関しての感想です。
もう一つは、法律のプロセスに関しては、
これは皆さん御存じのとおり議員立法だったので途中経過が全くわからず今日に至っています。
法律の成立過程について疑問をはさんでもいまさら仕方がないので、
この法律の中身に関して疑問点と評価する点を挙げたいと思います。
まず、この法律は文化芸術基本法にのっとっているわけです。
その中の2条6項で、障害の有無にかかわらず、文化芸術を鑑賞し、
参加、創造することができるように
環境整備を図っていきますということが書いてあるにもかかわらず、
またぞろなぜこの法律をつくる必要があったのかというのが第一の疑問です。
もう一つは、文化芸術基本法で踏み込まなかった芸術性の高い作品を評価するということが、
今回の法律では12条と14条に出てきます。
これは、非常に難しい問題です。それを誰が評価をするのか。
それこそ本郷先生の御専門ですけれども、現在、アートやデザイン系の大学、
専門学校で障害者の文化や芸術に関するカリキュラムをもっているところはゼロに近いはずです。
専門家が育っていないのに彼らの作品を誰がどのように評価をするのか。とても不透明ですね。
一方ですばらしいと思うところは17条の人材等育成です。
これは、ぜひやっていただきたい。
いま実働されている学芸員の方々が障害者の文化芸術を学んでいただき制作現場に足を運んでいただきたい。
くわえて特に私が期待をしているのはJUCA(ジュカ)、
56大学で組織している全国芸術系大学コンソーシアムです。
この組織を有効に活用して法律の意義や人材育成を図っていただきたいと強く願っています。
この分野にはアートと福祉を架橋した人材が圧倒的に不足しています。
もう一つ付け加えたいことがあります。
先ほどの文化庁の発言しかり、厚労省、外務省のお言葉にも
アール・ブリュットという文言がなんども出てきていますが、
この法律にはアール・ブリュットという文言は出ていません。
そのあたりをもう一度ご理解いただきたいと思います。
平成25年に私が「障害者の芸術活動への支援を推進するための懇談会」の委員になったときに
「名付け」の問題を議論したのですが最終的には非常に玉虫色な話で終わりました。
アール・ブリュットと呼んでもいい。アウトサイダーアートでもいい。障害者アートでもいい。
何と名付けてもいいというのが着地でしたが、今日、配布された各省の資料を読むと
アール・ブリュットや日本のアール・ブリュットと受け取れるような文言が多数あります。
それに対する異議申し立ては美術研究者や美術愛好家が論文やSNSを通して多数発信しています。
そのあたりもきちんと参照していただきたい。
障害者の文化芸術をアール・ブリュットという言葉で統一するのであれば、
きちんと公的に発表していただきたいと思います。
美術的、学術的裏付けをとっていただきたい。
言葉の整理、名付けはとても大事ではないでしょうか。
私はオリンピック・パラリンピックの組織委員会で文化・教育委員会の委員もしているのですが、
そこではアール・ブリュットという言い方は一度もされません。
そのカテゴライズは世界のインテグレーションの潮流に逆らっているというのが私の立場です。
1人の障がいのある人間としてもそう感じます。
いずれにしても非常に玉虫色になっている現状を整理したうえで
今回の法律の議論を展開するべきだと思います。
うやむやにしてほしくないですね。
以上です。
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https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000204935_00001.html

そろそろ第二回目の有識者会議の議事録もupされます。
またご報告します。

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